おだいじに





 堂島の眉間の皺が深い。
 眉間のそれはすでに癖になっているようで、表情を緩めても痕が残る。そのせいで大抵顰めしい顔をしている堂島だが、黒目がちな瞳の優しさと、意外なほど朗らかな笑顔がそれをカバーしていた。
 しかし今日の堂島の眉間の皺は、カバーし切れないほど深い。
「堂島さん、」ちゅ、と唇と唇が離れるリップノイズの後に、足立は囁く。「そんなキスが嫌なら」
「阿呆。……お前、痛み止め持ってねえのか」
「ないっすねえ。頭痛ですか」
「ああ」
 くそ、と唸る堂島は眉間を指先で揉み、唇を歪ませている。余程ひどいらしい様子に、足立は多少動揺した。堂島は頑丈で、弱った姿を足立にあまり見せない。
「堂島さん、…大丈夫っすか?」
 それ以外の気遣う言葉を、足立はあれほど勉強して来たのに知らなかった。堂島は眉間を揉みながら、痛みを堪えて眇めた目で足立を見て、ふっと溜息を零す。
 溜息にビクリと強張った足立の肩に、とん、と軽い重みが、堂島の額を押し付けられるのと同時にかかる。
「足立。すまん、少しこうしていてくれ」
「――はあ」
 もう少し気の利いた返事が出来れば僕も今までモテたのかもしれないなあと、足立は自分の肩に堂島の頭が凭れていると言う事実のもたらす衝撃に、意識が遠くなりつつ考えた。