カルマンド









 頼むよ。
 そう他の連中に願って、二人きりになった部屋で、金髪に口づけた。

 あんた金髪好きだもんな、と声が耳に蘇る。柩に横たわる顔は、目を閉じているせいか幼い。
 いい歳だと言うのに「幼い」などと。おかしな話だ。自分で思っておいて笑ってしまった。
 微笑んだまま、俺はジャンの額に、頬に、唇にキスをして。
 肩を抱きしめて、俺は低く歌う。子守唄を。
 せめて歌を。お前の世界の終わりに歌を。
 俺の世界と混ざっていたお前の世界は終わり、これから、俺だけの世界になる。
 ジャンの青白い頬に水が落ちた。俺は自分の目から涙を拭う。溢れて溢れても繰り返し拭う。いつかこの涙は止まる。そしてまた流れる。それでも繰り返し拭う。歌う。おやすみ、ジャンカルロ。良い眠りを。
 涙にけぶる視界に、眩しい金髪の金色だけが焼き付く。

 ……死してもこいつは、俺だけのジャン、にはならない。
 俺のボスとして死に、俺は、思い出を抱いて、お前を想って歌い、祈るしか出来ん。
 だが。

 ああ、今日の空はあの日のように青い。ジャン。お前がボスになった日だ。遠い日のようで、昨日のことのようだ。あの思い出は、お前そのもののように俺の胸を熱くする。
 残された思い出はひどく優しく、俺の体に、心に――魂に染み込んでいて、二度と離れることがない。

「ジャン、愛してる」

 俺の世界の終わりまで。