冬なので。



 もうすぐ新年だ。ニューイヤー。今年は去年になり、来年は今年になる。
 新年のパーティーまでの短い休暇を取ったジャンは、ジュリオと、彼の隠れ家のベッドの上でラジオを聴いていた。二人でうつ伏せに寝転がり、毛布を被って、時々互いの手ずからチョコレートを食べる。

「ジュリオー、こんなんでよかったのか? どっかカウントダウンに出かけたりとかさ……」
「はい、カウントダウンは人が多くて守りづらいですし」

 こくりと頷きながらのジュリオの言葉は、口調こそ柔らかかったが、視線はジャンを守護するものとして鋭い光を宿している。
 だが次の瞬間、彼の表情は柔らかく緩んだ。ジュリオはジャンを見つめながら、はにかんで微笑む。

「それに、ラジオ、おもしろいです」
「そっか?」
「この音をジャンさんも聴いていると思うと、なんだか…おもしろい、です」
「ハハ、俺基準なわけね。じゃあ今度は映画見に行こうぜ」

 ジャンが誘うと、ジュリオは嬉しそうに頷いた。ジャンは手を伸ばし、ジュリオの指に自分の指を絡めて握りながら、約束な、と囁く。

「は、い……」

 嬉しそうにしていたジュリオの視線がどぎまぎと周囲をさ迷い、枕に落ちる。繋いだ指先はそのままにして、ジャンは素知らぬ顔でラジオに顔を向けた。
 ラジオの音だけが聞こえる時間が一分ほど過ぎ、あの、と控え目にジュリオに呼ばれ、ジャンは頬杖をついてジュリオの方を見る。

「なんだ、どしたのけ?」
「あの、ちょっと、寒いです……」
「そうか? んじゃ、もっとこっち寄れよ」
「はい」

 肩を引っ張られたジュリオの体は、ジャンと肩をぴったりくっつける位置まで近づいた。触れ合う体の部分が、二人分の体温を逃がさずにあたたかい。
 だがジュリオはまだ枕に視線を落としていた。

「どうだよ、ジュリオ。あったかいか?」
「……あの、まだ……寒い、です……」
「じゃーもうちょっとこっちな。……なんだよ、手ぇ震えてんじゃねえか」

 きゅっと指先を強めに握ると、ジュリオは手首をビクンと強く震わせた。ジャンはその手を逃がさずに、ジュリオの手の甲側から指の股に指を突っ込み、皮膚の薄い場所をわざと擦る。ジュリオの唇が、頼りなく微かに震えた。

「あ、あの、……はい、あの、ジャン、さん……」
「寒いか?」
「……、……はい…」
「ほんとに?」
「あ、いえ、あの……」
「……フハ、冗談だっての。勃っちまったんだろ。ほら、もっと……奥まで来いよ、ジュリオ?」

 急がないと来年になっちまう、と誘われて、ジュリオは、ラジオの声をBGMに、シャツの前を開いたジャンの胸元に手を差し込む。
 幸福に満ちて新年を迎えると言う初めての出来事に、涙目になったジュリオの目尻を、笑ったジャンの舌が這った。







2009.12.31