※ルキーノ×GDジャン+ベル
「死ぬときには、さ」
話し始めると、ルキーノの体がびくりと震えた。怖がんなよ。俺のライオン。俺はルキーノの腕を、慰めるように擦る。
「ベッドで死ねたらいいよなあ。そこで、楽しかったことばっかり思い出してえな、俺」
「……ヤクザにとっては夢物語だな」
「出来るぜ。だって今、俺、ベッドの上じゃん」
ルキーノに全身を預けた体勢で笑うと、ルキーノも少し笑った。胸が笑いに震えて、ぴったりくっついた俺の体も震える。楽しくて、俺は、腰に刺青が入る前のことばかり思い出しながら、また笑った。
笑う俺の体をルキーノはきつく抱きしめる。体が捩れて、傷が痛む。ずきずきと脈打つ痛みに一瞬気が遠くなった。
「痛えよ、ルキーノ」
「ああ、わかってる」
「でもあんたに痛くされてたい」
「ジャン」
「最期は、あんたの痛みでしにたい」
ルキーノは、腕の力を少しも緩めることはなかった。
「俺は惨めだ。スマン、ルキーノ。もっとあんたの誇れるような男に、なりたかったはずなんだけどさ……」
「そんなことを言うな、カヴォロ」
「あんたこそ、俺にそんな優しい声かけていいのけ」
「誰もいないさ」
黙ると、耳が痛くなるほどの静寂が俺とルキーノを包む。
ルキーノ、何か喋ってくれ。もっと抱いてくれよ。痛みがさっきから遠いんだ。瞼にかかってるのはあんたの息かな。もう目が開けてられねえよ。眠くてさ。もっと痛みを――俺にとどめを――
――俺がその場に着いたとき、ルキーノは血溜まりの中に座っていて、上等なコンプレートも、ジャン――だったものに被せたコートも、血まみれだった。すぐに失血死だとわかる量だった。俺は気が遠くなるのを大きく息を吸うことでどうにか堪え、踏み出す。ピチャリと足元で水が跳ねるような音がした。その赤い水に触れたい。それは、大事な弟分の中にあったものだから。
「ルキーノ」
呼ぶと、ローズピンクの目が俺を見上げた。感情のうかがえない目だった。ベルナルド、と呼ぶ声は、殆ど唇が動いただけで音になっていない。
ルキーノは俺を認識し、呼んだ後、自分のコートごとジャンのしたいを両腕で抱きしめる。金髪に顔を埋めたルキーノの赤毛を、俺は見下ろす。足元には大事な弟分の血。なんて光景だ。だが、ルキーノがしていなければ、俺がそこにいたはずだ。ジャンを愛していたもの以外が与える、もっと残酷な最期を回避するために。
「ベルナルド」
金髪に顔を埋めたまま、ルキーノが言う。
「殺せなかったんだ」
「ああ」
「一発で。俺は……俺は、ジャンを、苦しめた」
このまま死ぬんじゃないだろうかと思うような、絶望のこもった声だった。
奇遇だな。ルキーノ、俺もいま死にたい気持ちだ。