普段は非合法な取引に手を染めているがその実態は正義の味方!!2



※戦隊パロ





ラッキー戦隊の活躍で平和を維持するデイバン市。しかし、その平和も一時のものだった。デイバン市の闇、その全ては消えていない。暗躍する敵の影をラッキー戦隊は捕えることが出来るのか!?(cv.アレッサンドロ)




「──で、その敵ってのは? いるのけ?」
「部下からの報告には上がっていないね、カポ……いや、リーダー・イエロー」
「親父、その敵ってのはどんな連中なんだ? 噂も流れて来たことがないぜ」
「ボンドーネでも、デイバン市だけでなく周囲の町の様子を定期的に調べていますが……聞いたことが、ないです」
「ウチのシマでも平和なもんだぞ、オンナどもにヤク売りつけようとしたバカは来月くらいまで自分でしょんべん出来ねえカラダにしてやったしよ」
「そりゃあ、平和だろう。今のは、俺が考えたラッキー戦隊CR:5の今後の展開だ」
「おーい、だれかー、アレッサンドロ親父にマディラワインとプロシュートと口出しできねえ環境をー」


 映画会社D・S・P敷地内にある大きな一棟の建物。偽装されており、けして表だってはいないが、マフィアグループの本部であるその地下には、更に隠された本部があった。
ラッキー戦隊CR:5、五色の光を身にまとい、正義のために戦うグループの本部基地。
 いま、アレッサンドロをさりげなくバカンスに追いやることが決定した場所である。


「さて諸君」
 ベルナルドが本部の円卓に両肘をつき、両手指を組んだ上に顎を置きながら切り出した。
「親父はひとまずアルカディアへ、夏のバカンスに行って貰った。プールサイドで今頃、冷たいカクテルを楽しんでくれていることだろう」
 眼鏡を天井からの照明に光らせながら言うベルナルドは、オブラートを重ねたような物言いで、まるで暗躍する張本人のような様相だが、実態はラッキー戦隊のグリーンである。この場で円卓を囲む他の面々、ジャン、ルキーノ、ジュリオ、イヴァンの四人も、同じくラッキー戦隊の中の人、あるいは正体と呼ばれる立場だ。
 ベルナルドは前置きを終えると、片手を卓上にあった紙の小さな山へと伸ばし、一番上のものを持ち上げる。そこに書かれているものは、極秘裏に集めた生々しい情報だ。もっと言えば、無記名制のラッキー戦隊向け投書箱に投書された手紙である。
「ファンレターなどは別に分けてある。今回は改善の余地のある投書を読み上げるよ──エレメンタリーから、最近ラッキーパープルのカードを女子が校内に持ち込み、トレードのことでもめごとが多いと苦情が」
「オオ? ジュリオ、こないだ学校で事件あったとき活躍したからなあ」
「それでは、子供向けに特別なカードを配布するイベントをボンドーネで……喧嘩をしないようにと、ラッキー戦隊からのメッセージカード付で」
 ジュリオは発言すると、どうですか、と視線をジャンへ投げかける。ジャンはそれにばちりとウインク一つで応じ、ジュリオの頬を嬉しさでバラ色に染めさせた。
「それ採用。場所は……公園でいっか? 慈善事業っぽく行こうぜ」
「カードのデザインは早急にデザイナーを呼んで進めよう」
「頼むぜ、ベルナルド。次の投書は……っと」
 紙の山へ今度はジャンが手を伸ばした。ちらりと見た瞬間に真顔になり、どうしたのかと周囲から怪訝な視線を集めながら、真顔のままでベルナルドの席まで見せに行く。
 ベルナルドが不思議そうな顔でジャンに見せられた投書の紙を見やって──なぜか同じく、表情のない真顔になった。何か深刻な話なのかと眉をひそめる他の三人に、ベルナルドは片手を軽く上げて制する。
「……別に深刻な内容じゃないさ、俺が読もう。ルキーノ宛てだな。先日、川に落ちてラッキーレッドにパートナーともども助けていただいた者です。ありがとうございました。あれからパートナーがレッドに夢中で、私をあまり構ってくれません」
「川? ああ、先月そんな事件があったな。──イヴァン、お前も一緒だったか?」
 ブルーよりもレッドに女性は魅かれたのだと、イヴァンの方をニヤついてからかうルキーノに、更に上を行くニヤつき具合でジャンがひらひらと投書の紙を揺らす。
「ちなみに差出人の方がレディ、パートナーは男だそうでしてよ、レッドさん?」
「なっ」
「ギャハハハ! オトコだってよ! ざまーみろ、ファック!」
「くっ……それは、丁度D・S・Pで扱う映画に、傍にいる人の大切さに気づいた、と言う内容のものがある。川べりにデカイ広告をいくつも出して、目につくようにする……か……」
「ルキーノと投書してくれたシニョーラのためにそうするべ。さってと、次は──」
 大笑いするイヴァンは噎せ始めて、卓上の冷めた珈琲を飲んでいる。悔しげに落とされたルキーノの肩を叩き、ジャンは次の投書へと手を伸ばした。二つ折りの真っ白な紙を開き、そこに書かれた短い言葉にジャンは首を捻る。
「ラッキーイエローのパンツください。なんぞこれ、間違って入ってたのけ? イタズラか」
 ジャン以外の全員が一斉に立ち上がり、同時に、懐に持っていた拳銃やナイフを揃って取り出した。


 デイバンには、正義を守るヒーローがいる。





2013.08.18.